風が駆け抜ける石飛高原
天の製茶園は昭和の初め、天野さんの祖父が開拓団として入植したのがはじまりです。
遠くに島原雲仙岳から鹿児島の霧島を見渡せる標高約600mの高原に茶畑はあります。
実生在来種をはじめ 20種類以上の品種のからなる天の製茶園の茶畑
紅茶づくりは、二代目の茂さんがはじめました。
体の弱かった妻に、おいしい紅茶を飲ませたいと思い立ったのがはじまりだそうです。
試行錯誤を繰り返しできた紅茶は、渋みが少なく優しい味。それは日本の食事にもよく合うすっきりとした味わいでした。
海外の紅茶に飲み慣れた方からはこれは紅茶じゃないといわれたこともありました。それでも、これが個性と、オリジナルブランド「天の紅茶」が誕生しました。
自然栽培の茶畑 お茶の花も秋には咲く
天の製茶園では、お茶の栽培から製品になるまで一貫して行われます。
栽培は、土地の個性を色濃く表現できる自然栽培で、農薬で肥料も使いません。
茶畑には鹿もやってくるし、雑草も生えていますが、できるだけ共存できる形で栽培されます。
お茶の摘み取りが終わると、茶葉を天日で干す「萎凋(いちょう)」という重要な工程へ
「山菜摘みをするように、その土地で育ったものをそのまま使う感覚と似ています。茶葉は、それぞれ個性にあふれているので、本来の味をシンプルに味わってもらえたら嬉しい。」と浩さんは話します。
天の紅茶の飲み比べ
味、香り、色もそれぞれに個性豊か
天の製茶園には国内外からお茶好きの方をはじめ、農業や食に関心がある方、学生さんたちが、はるばる学びに来られます。
茶摘みやお 茶作り、そして、紅茶の飲み比べを体験してもらう中で、
「どれが優れている劣っているということはなく、それぞれが味わい深いことを感じてもらいたい」と。
和紅茶の奥深さをもっと知ってもらい、若い人たちには、ここからいろんなことに興味を持ってもらえたらと話してくれました。
2024年9月
取材・写真 安本多美子