桜野上場
熊本県水俣市の薄原、桜野上場でお茶作りをしている桜野園。
茶畑には昭和2年に曽祖父が開墾し種から育てた在来種が広がります。
「害虫っていう虫はおらんよ。人間が勝手に『害』だといっているだけやから。」
そう話してくれたのは四代目の松本和也さん。
蜘蛛は大事とはなしてくれる松本さん
四代目となる松本和也さんが一念発起で始めたのが無農薬のお茶作り。松本さんが20代前半の頃でした。
当時、その年の 天候によってお茶の値段が安く「自分のお茶を作らないと生き残れない」との思いが強くなります。
また、農薬を散布することがきつく、自分の体への負担を感じながら農薬をかけても、虫も病気もなくならない。それならば「農薬を除草剤をしないことを選びたい。自分自身にも環境にもよい道を進みたい」と無農薬のお茶作りが始まりました。
紅茶の茶葉は6月ごろ、柔らかい新芽を摘む
茶の木には種もできる(在来種)
当初は売り先もなく、家族からは心配もされましたが、無農薬のお茶の価値が見出され、東京の生協との取引が始まりました。それから約10年後、桜野園のお茶が新聞に掲載されたことをきっかけに、全国から問い合わせがくるようになります。
人から人のご縁はさらに広がり、今では国内だけでなく、ロンドンの紅茶店「ポストカードティーズ」にも取り扱いがあるほどに。ロンドンやUKのレストランやホテルで、桜野園のお茶が取り扱われているそうです。
工場で品種の違う茶葉の香りを確かめる
松本さんは、無農薬、無肥料の自然栽培にも取り組まれています。
2022年には、イギリスお茶のコンテスト(THE LEAFIES 2022)で「自然栽培 あかね (べにふうき)」がHIGHLY COMMENDEDを受賞しました。
「あかねは、新芽を通常の三分 の一の小ささで収穫して作る特別な紅茶。
その分、他にはない香りと味があります。ワインのように熟成していくので、それもまた楽しみよね。」と語る松本さん。
自然栽培のブレンド「紅」、自然栽培のべにふうき「あかね」、やぶきたと在来種がメインのブレンドの「さくら紅茶」
日本の食卓にもよくあう和紅茶。松本さんおすすめの急須で紅茶を淹れていただきました。
やさしく、香りのよい和紅茶。
お茶を淹れていっぷく。松本さんの和紅茶が広がっています。
2024年9月
取材・写真 安本多美子